中国語は直接的な言い回しが多いので、なんとなくのニュアンスで伝える日本語には訳せないものもありますよね。私も考えてみたことがあるのですが、直訳はできるものの、日本人の感覚としては不自然だな、というものがあります。その中でも今日取り上げたいのはお礼を言われた時の返しです。
どういたしまして、は実はあまり言わない
中国語では褒められた時や、お礼を言われたときに「没事」や「不客气」を使うことが多いかと思います。これを日本語に直接訳すと「いえいえ」「どういたしまして」に当たりますね。きっと日本語の教科書にもお礼を言われたら「どういたしまして」と言うように、と載っているかもしれません。でも、日本で生活している方ならお分かりと思いますが、「どういたしまして」を使う日本人って実はあまりいません。
「いえいえ」なども親しい友人なら全く問題ありませんが、接客業などではどうでしょう。お客様に「いえいえ」と返すのは少し砕けすぎている印象がありますね。私も以前接客業についていたことがあるのですが、商品を探しているお客様をご案内した後にお礼を言われ、返しに困ったことがありました。
「とんでもないです」は日本人らしい謙遜さがある
それではなにを使ったらいいのか。考えた結果「とんでもないです」の一言はとても日本人らしい返答だという結論に至りました。
「とんでもないです」の裏には、「お礼を言っていただくほどには及びません」「当然のことをやったたまでです」などのニュアンスが含まれています。自分が下に出ていることが、雰囲気で伝わってくるわけです。相手より下に出ることで安心感を得る、日本人らしい謙遜さがあります。かといって、相手の「ありがとう」を無下にすることなく、きちんと受け取ったことが伝わるので、相手に嫌な気持ちもさせません。
「とんでもありません」と言いたい気持ちを抑えよう
「とんでもない」をマスターすると、そのうち「とんでもありません」「とんでもございません」と言いたくなってきます。もっと丁寧に言いたくなるわけです。こうなったらあなたは心まで日本人化している証拠。言語だけでなく、精神態度まで学び取っているということですから、素晴らしいことです。
でも、実は「とんでもない」はそれで一つの形容詞なので、「ない」を変化させた「とんでもありません」「とんでもございません」は間違った日本語になってしまいます。もっと丁寧に言いたくなる気持ちは分かりますが、そこをグッと抑えましょう。その場合は「とんでもないことでございます」が使えます。
(※「とんでもございません」は使う人があまりに多かったため、今では問題なしとされています。)
ニュアンス日本語は日本人の気持ちを知ることがカギ
今回は褒められたりお礼を言われたときに使えるニュアンス日本語をご紹介しました。ニュアンス日本語をマスターするには、日本人のスピリッツを知ることが大切です。それが分かると、自分の中でも違和感が出てきたり、こう言った方がしっくりくる、というものを見つけられるようになりますよ。
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