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中国語人名、現地読みするべき? 日本語読みするべき?

一部の日本の新聞から始まり増えているのが、中国人名を現地読み(中国語発音)で表記する文章です。たとえば、習近平国家主席で検索すると、朝日新聞・習近平(シーチンピン)党総書記、日本経済新聞・習近平(シー・ジンピン)国家主席、NHKニュース・習近平国家主席などと表記がバラバラです。

実はこれに在日中国人たちが困惑しているとの声を聞きます。
「日本人の発音で“シー・チンピン”と言われても何のことか分かりません」(ハルピン出身の張さん)
発音と漢字が直結せず、理解できないからだそうです。

「習近平」の中国語発音をローマ字表記するピンインで表すと「XiJinPing」となります。日本人など中国語を外国語として学ぶ人は、最初にこのピンインのルールを学習します。特に非漢字圏の外国人にとっては、最初は漢字がまったく読めないので、ピンインが命綱となります。特に日本語は声調(トーン)が少ない言語なので、日本人が中国語読みで話すと余計に分からないそうです。

日本人の発音で“シー・チンピン

新聞以外の雑誌でも、中国語発音がルビとして付けられているメディアも増えています。現在は主に活字媒体ですが、これがテレビニュースなど音声でも使われ始めたら大変だと張さんは心配しています。

そもそも外国の名前や地名をどう読むかは、相手との相互主義で決まっています。比較的最近、相互主義に基づいて変更されたのが韓国や北朝鮮です。30年ほど前まで金大中(きんだいちゅう)と呼んでいたのが、大統領に就任した1998年にはキム・デジュンと韓国語発音で呼ぶようになっています。

韓国や北朝鮮の人たちは漢字を使用しないので、現地読み、発音を重視しています。一方、日本人や中国人は発音よりも漢字を重視しているので、たとえば、私の名字は、中国では我妻(ウォチー)と呼ばれます。中国人は「『私の奥さん?』 なんだ? この変な名字は?」と思うのでしょうが、読み方が違うだけで、漢字を使うほうが圧倒的に便利で、何よりも馴染みがあります。特に不都合もありません。

過去、日本が中国から中国語に近い読み方に変更してくれと求められたことはありませんし、日本から中国へ求めたこともありません。だから相互主義で日本語、中国語それぞれの読み方で発音すればいいわけです。

では、なぜ2002年頃から一部の新聞が中国語読みを始めたのか。これは定かではありません。以下は私の推測になりますが、年代的に韓国や北朝鮮の人名や地名の現地語読みが定着したことの影響が考えられそうです。

中国語発音表記は、中国側が希望もしていないのに日本の新聞側の一方通行の自己満足的な“配慮”によって始まったと思われ、相手の意向に沿った相互主義に基づいたものではありません。

また、中国語風にカタカナ表記すると「言葉のゆらぎ」が生じ、シー・ジンピンだったり、シー・チンピンになったりバラバラになるわけです。私が習った中国語ではジンと聞こえますが、中国の地方によってはチンと聞こえ、実際にそう発音している人もいます。

結局、混乱して迷惑するのは、他ならぬ中国人だったりするのではないでしょうか。

(我妻伊都/5時から作家塾®)

FueruWHA!レポーター/プロフィール

我妻 伊都(わがつま いと)
編集者・フリーライター。SARSが流行しているとき中国へ初出張。2005年から拠点を中国へ移し十数年過ごす。現在は東京拠点に活動。中国では出張者、駐在員、現地採用、留学生、フリーランス、NPO理事などを経験。11年に雑誌編集者、12年に月刊誌でプロライターデビュー。『ニューズウィーク日本版』『日本と中国』『週刊SPA!』『ハーバー・ビジネス・オンライン』等へ執筆。機関紙や専門誌の編集にも携わる。
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