TIPS FOR FOREIGNERS LIVING IN JAPAN外国人向けお役立ち日本情報

常温ビールがお好み?冷たいビールを飲まない中国

今年も冷たいビールが恋しい季節到来です。ビール好きにはキンキンに冷えた生ビールが頭に浮かびそうですが、実はキンキンに冷えた生ビールをイメージするのは日本人だけかもしれません。

日本へやってきた中国人のなかには、日本のビールは冷たすぎると驚く人が少なくありません。逆に中国を訪れた日本人は中国のビールはなまぬるいと思う人が多いと思います。

中国は全体的にビールを冷やして飲むことは少なく、ぬるい、正確に書くと常温で飲むことが多く、都市部に増えてきたローソンやセブン-イレブンなどの日系のコンビニエンスストアでも日本ほど冷えておらず、少し冷えた程度で販売されていることが一般的です。

そもそも日本料理店や外国人が多く利用するような一部のバーを除けば生(ドラフト)ビールは提供されておらず、中国の飲食店で提供されるビールは瓶入りや缶入りが主流となっています。

中国全土で広く飲まれる青島ビール

中国全土で広く飲まれる青島ビール

中国ではビールに限らず東西南北問わず冷たい飲み物・食べ物を避ける文化があります。真夏でも水は常温か、少し冷えた程度で提供されます(お湯を希望する人も多いです)。

日本でもたまに見かけますが、日系コンビニで売られているおにぎりもレンジで温めるのが一般的です(温める食べ方に合わせて海苔が改良されています)。

中国人がビールを冷やさない理由の1つは、中国医療(漢方=中医と呼ばれる伝統医学)の考え方が根付いていることが影響していると考えられます。

私は中医の先生に6年ほど治療をしてもらいつつ、話を聞いてきました。先生から聞いた話は、日本の漢方と中医は根っこの思想は同じだけど、薬である漢薬の薬剤、作り方はかなり違ったものになっているとのことです。日本の漢方は室町期に普及し、江戸時代に独自の進化を遂げたとされています。

ビールの本場ドイツでも出されるビールはそんなに冷えてない

ビールの本場ドイツでも出されるビールはそんなに冷えてない

日本の漢方にも共通する中医の基本的な考え方、それは、身体を冷やさないことにあります。特に臀部を温め、汗を掻くぐらいの厚着をする。体を冷やすものを食べない、飲まない。基礎体温を高めることで抵抗力を高めて未病に努めていくという考え方です。

ここに冷たい飲み物が関連してきます。中国では今でも広く根付いている伝統医療の影響もあって冷たいものを好まないようです。

もっとも最近は、エアコンや大型冷蔵庫も増えたので冷やした瓶ビールを提供するレストランも増えています。そのため、注文時に、「青島ビールを。常温で」と、日本ではまったく馴染みがない注文のしかたで、冷えていないビールを頼む人も少なくありません。

私の中医の先生は、「冷たいビールは胃によくない」と常々言っていましたが、なるほど一理あるなと今でも思っています。

著者は20数カ国ほどにしか行ったことはありませんが、現地のローカルビール観察が趣味なのでつぶさに観察しています。そこでわかるのは、ビールを常温で飲む国は少なく、ちょっと冷えた程度でビールを楽しむ国が多く、ジョッキを凍らせるほどキンキンにして飲む国は日本くらいかもしれないということです。

(我妻伊都/5時から作家塾®)

FueruWHA!レポーター/プロフィール

我妻 伊都(わがつま いと)
編集者・フリーライター。SARSが流行しているとき中国へ初出張。2005年から拠点を中国へ移し十数年過ごす。現在は東京拠点に活動。中国では出張者、駐在員、現地採用、留学生、フリーランス、NPO理事などを経験。11年に雑誌編集者、12年に月刊誌でプロライターデビュー。『ニューズウィーク日本版』『日本と中国』『週刊SPA!』『ハーバー・ビジネス・オンライン』等へ執筆。機関紙や専門誌の編集にも携わる。
我妻 伊都 twitter

その他の我妻伊都によるコラムはこちら
https://fueruwha.com/?s=%E6%88%91%E5%A6%BB+%E4%BC%8A%E9%83%BD&submit=