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ファイナンシャルプランナーによる生命保険の話 vol.6「高額療養費制度ってなに?」

お客様とお話ししていると「入院したら、いくら必要なの?」とか、「日本では、医療費はそんなにかからないと聞いているんだけど」などの質問をいただくことがあります。皆さんにぜひ知っておいていただきたいのは、「高額療養費制度」(高額医療費支給制度)という制度です。

「入院したら、いくら必要なの?」

高額療養費制度とは

皆さんが病気やケガで病院に行ったとき、健康保険証を提示すれば自分が負担する金額は原則3割だけになります(小学生から70歳未満の場合)。ですが、もしも大きなケガや病気をして医療費がものすごくかかり、何十万円もあるいは何百万円にかかってしまったら、いくら3割だけ負担すればいいといっても大変ですよね。

そんな時でも、自己負担額の上限を設けてそれ以上は負担しなくてよいというのが「高額療養費制度」です。それにより、医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給されます。

自己負担の上限額

負担の上限額は、年齢や所得によって異なります。例えば、69歳以下の場合は、以下の通りです。

注) 1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同 じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です。) を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

注) 1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同 じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です。) を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

上記で計算された上限額以上の医療費を支払うことになった場合は、その差額が支給されます。例えば、年収500万円の人が入院して治療を受け、100万円の医療費がかかったとします。それに対する自己負担は3割なので、30万円を自己負担する計算になります。

年収500万円の人の自己負担上限額を計算すると、上記の表から
80,100円+(100万円-267,000円)×1% = 87,430円 となります。
つまり、87,430円だけ自分で支払えばいいことになるので、医療費の自己負担分30万円から87,430円を引いた212,570円が、高額療養費として支給されるのです。

年収500万円の人の自己負担上限額を計算すると、上記の表から 80,100円+(100万円-267,000円)×1% = 87,430円 となります。

高額療養費の対象となる医療費は、1つの医療機関においてその月の支払額が21,000円以上のものに限られます。また、1つの医療機関であっても、医科と歯科、入院と外来は分けて計算します。(70 歳以上であればこれらに関わらず自己負担額をすべて合算できます。)

高額療養費制度の注意点

高額療養費制度は、だれもが安心して十分な治療を受けられるようにと作られた制度ですが、いくつか注意しなければならない点があります。

1) 医療機関の窓口で支払う金額すべてが高額療養費の対象というわけではありません。入院時の食事代や差額ベッド代など、公的医療保険の対象外のものは除いて計算されます。
2) 全額自己負担になる歯のインプラント治療や不妊治療などの自由診療、そして先進医療も高額療養費の対象外となります。
3) 計算の対象は、毎月1日から月末までの1か月間です。同じ100万円の医療費であっても、月をまたぐと自己負担額が増える可能性があるのでご注意ください。

例えば、15日から翌月の14日までの1か月間入院したケースで考えてみましょう。15日から月末までに50万円、翌月1日から14日までに50万円の医療費がかかり、合計100万円の治療費がかかったとします。高額療養費は月ごとに計算されるので、15日~月末までと、翌月1日~14日までは別に計算されるため、自己負担額は10月分として82,430円、11月分として82,430円と、ほぼ倍になります。

例えば、15日から翌月の14日までの1か月間入院したケースで考えてみましょう。

まとめ

「高額療養費制度ってなに?」

入院が決まり、医療費が高額になりそうなときには、事前に加入している健康保険組合(または会社など)に相談してください。「限度額適用認定証」が発行されるので、医療機関にそれを提出すると、窓口での支払い額が自己負担上限額までとなります。(「限度額適用認定証」がないと、一度自分で全額を支払い、後日差額分が給付されることになります。)

また、何らかの理由で入院費用などが支払えない場合は、まずは支払い先の病院に相談してみてください。一般的には分割払いなどの方法が考えられますが、病院によっては、公的な医療保険制度について教えてくれたり、あるいは様々な相談にのってくれるソーシャルワーカーがいるところもあります。

入院した時には、差額ベッド(個室)代、食費の一部(1食460円)、お見舞いに来る家族の交通費などの費用や、先進医療や自由診療の費用など、高額療養費制度の対象とはならず全額自己負担しなければならない治療費も発生する可能性があります。そして、入院したことにより収入が減るリスクも出てきます。

次回は、それらのリスクにどのように備えるかについて、ご紹介させていただきます。

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FueruWHA!レポーター/プロフィール

佐々木 祥惠

佐々木 祥惠(Sasaki, Sachie)
■トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)
■ 2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)
■ 1級生命保険鑑定士

ファイナンシャルプランナー(FP)になる前に、25年間にわたり通訳翻訳会社で働き、日本に住む外国人の方々と一緒に様々なプロジェクトを担当してきました。

ファイナンシャルプランナーとなりお金や保険の勉強をするにつれ、自分が学んだことを多くの人に伝えたいと思い、保険代理店に所属し保険の営業だけではなく、マネー相談やマネーセミナーなどを行っています。昔大変お世話になった日本に住む外国人の方々のお役にも立ちたいと思い、このコラムを担当させていただきました。

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