日本でも広く知られる「西遊記」。玄奘三蔵(以下、三蔵法師)は実在の人物で、しかもお墓が日本の埼玉県にもあるって知っていますか。今回はそんな埼玉の隠れたチャイナスポットをご紹介します。
三蔵法師の霊骨を祀るのは、さいたま市岩槻区にある慈恩寺です。電車の駅からは遠いので自動車で行くのがお勧めです。
正確には慈恩寺から少し離れた南側に、玄奘塔という場所へ納骨されて祀られています。玄奘塔が建立されたのは1950年のことです。玄奘塔は13重の花崗岩の石組みで、高さはおよそ15メートルあります。境内は入り口の唐門から中国を感じさせるつくりになっています。
三蔵法師は中国でもよく知られています。慈恩寺と聞くと中国人なら西安の大慈恩寺を思い起こす人が多いと思います。斜塔で有名な世界遺産の大雁塔があるお寺です。まさに埼玉の慈恩寺は、大慈恩寺にちなんで命名されたお寺なのです。
玄奘塔唐門(駐車場は無料)
実は三蔵法師は日本のほうが古くから有名かもしれません。三蔵法師の直弟子に日本からの留学僧がいため、三蔵法師の名前や名僧としての話は7世紀当時から日本へ伝わっていたようです。
現在、知られる西遊記が誕生したのは、明代の16世紀とされます。その西遊記が日本へ伝わったのは江戸時代(1603年~1868年)初期の17世紀初頭で、その後、漢文から和文へ翻訳されて読まれていった歴史があります。
諸説ありますが、三蔵法師が天竺(現在のインド)から持ち帰り漢訳したとされる般若心経は、日本へ伝わり、仏教の発展へ大きく寄与したとされます。般若心経は、玄奘塔がある慈恩寺の天台宗や初詣有名な成田山新勝寺の真言宗、法相宗などで重視され、その他の仏教宗派でも広く使われています。
というわけで、三蔵法師は日本の仏教史に大きな功績があるため日本ではよく知られているわけです。
境内には三蔵法師の銅像と日本の寺院では少ないマニ車がある
西遊記に登場する孫悟空は、中国では京劇で演じられることも多く、こちらもよく知られていますが、日本同様、中国でも使われるZ世代と呼ばれる若い世代では、漫画『ドラゴンボール』の主人公、孫悟空のほうをイメージするかもしれません。
なお、慈恩寺の三蔵法師の霊骨は、1980年、奈良県の薬師寺に分骨されています。薬師寺は法相宗のお寺で、日本で法相宗を広めたのは、道昭という僧侶なのですが、この道昭が少し触れた三蔵法師の直弟子だった日本人僧侶なんです。その縁で薬師寺へ分骨されたそうです。
日本で三蔵法師ゆかりの場所を探索してみるのもいいかもしれませんね。
三蔵法師の霊骨を納骨する13重の石塔
(我妻伊都/5時から作家塾®)
参考サイト
さいたま観光国際協会 玄奘塔
FueruWHA!レポーター/プロフィール
我妻 伊都(わがつま いと)
編集者・フリーライター。SARSが流行しているとき中国へ初出張。2005年から拠点を中国へ移し十数年過ごす。現在は東京拠点に活動。中国では出張者、駐在員、現地採用、留学生、フリーランス、NPO理事などを経験。11年に雑誌編集者、12年に月刊誌でプロライターデビュー。『ニューズウィーク日本版』『日本と中国』『週刊SPA!』『ハーバー・ビジネス・オンライン』等へ執筆。機関紙や専門誌の編集にも携わる。
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